軍艦島あるいは廃墟の力

そこにあるすべてが壊れ、朽ち果てているにもかかわらず、強烈な力を放ち続ける廃墟。誰も意図して今あるかたちに作り上げたわけではないにもかかわらず、自然の偶然の作用と人間の歴史の堆積とが重なりあうことで、どんなアートよりも強烈なアートにして、…

「育児休暇」考

日曜日に二カ月ほどの育児休暇を終えて職場復帰しました。男性の育児休暇取得率がまだまだ低い中で、この貴重な経験をする機会を得られたのも、熊本大学と同僚の先生たちのおかげです。感謝です。 大学内外のいろんな人(男性)に「育休取るんです」あるいは…

民博再訪

この前の日曜日、大阪の民族学博物館での研究会でアルキについて発表をしてきました。(「帰還移民の比較民族誌的研究―帰還・故郷をめぐる概念と生活世界」(研究代表者:奈倉京子)http://www.minpaku.ac.jp/research/activity/project/iurp/11jrw004「帰還…

囚人墓地のこと

共同通信発の三池炭鉱についての記事が、佐賀新聞、中国新聞、信濃毎日新聞に載りました。その中で、短いですがコメントを寄せました。 もう一つ三池関連の話。三池炭鉱ではかつて囚人を労働させていました。その中で亡くなった人々の慰霊祭が、毎年「大牟田…

学部ゼミが記事に

松浦ゼミ(学部)が熊本日日新聞(5月28日)で紹介されました。

ホームページ・リニューアル

ホームページをリニューアルしました。Iさんのサポートのおかげです。Iさんどうもありがとうございました。 http://www.let.kumamoto-u.ac.jp/ihs/soc/sociology/matsuura/index.html

オランド大統領の誕生

フランス大統領選挙は、誰もが予想する通りの結果となり、オランド大統領が誕生することになりました。極右政党党首が白票、中道政党および左翼党の党首がオランドへの投票を言明していたなかで、オランド51,63%、サルコジ48,37%という結果なの…

ふたたび三池炭鉱をめぐって

前回の三池炭鉱の報告書に関連して書いた短文二つが、印刷完了しました。 一つ目は『日仏社会学会年報』に書いた「産業遺産と文化のグローバル化」。これは去年の11月にパリの社会科学高等研究院(EHESS)で行われた日仏研究会での発表を論文にしたものです。…

調査実習報告書『三池炭鉱−地域の記憶、世界の遺産』

昨年度、三池炭鉱をフィールドにおこなった調査実習の報告書『三池炭鉱−地域の記憶、世界の遺産』が完成しました。教員2名(もう一人は同僚の文化人類学者・慶田勝彦氏)、学生35名による大がかりな調査で、A4サイズで220ページを超える内容になって…

『宮崎県外国人生活実態調査』の刊行に寄せて

宮崎県国際交流協会が企画・実施した「外国人生活実態調査」の報告書が刊行されました。私もコメントというかたちで関わりました。 定住・永住外国人と言えば、もっぱらオールドカマーの多く住む関西・関東のような大都市圏や、日系人などのニューカマーの多…

アルキ論

『アジア遊学』145号「帝国崩壊とひとの再移動」に、アルキにかんする短文「アルキとは誰か―フランスにおけるもう一つの『引揚者』問題」を執筆しました。帝国崩壊とひとの再移動 (アジア遊学 145)作者: 蘭信三出版社/メーカー: 勉誠出版発売日: 2011/08/26…

3.11後に『危険社会』を読む

1986年に出版されたドイツの社会学者ウルリヒ・ベックの『危険社会』は、すでにリスク社会論や環境社会学の古典となっている。チェルノブイリ事故の直前、そしてフクシマ事故のはるか四半世紀前に書かれながら、破局的事態を引きおこす危険=リスクを構…

100,000年の孤独

マイケル・マドセン監督の映画『100,000年後の安全』をDenkikanで観た。これはフィンランドの首都ヘルシンキから北西へ240キロのオンカロという町にある、原子力発電所から出される放射性廃棄物の保管施設についてのドキュメンタリー映画だ。 核燃…

震災は続いている

地震の発生からほぼ2カ月後になるゴールデンウィークの期間中、宮城県を訪れた。地震直後はあらゆる交通網が遮断されていたが、かなり復旧しているようで、大きな困難もなく現地に入ることができた。 仙台空港は、仮設のカウンターや手荷物受取所でようやく…

炭鉱街と雪:釧路の一日

古びた建造物が繁茂する草木によって覆われたり囲まれている光景は、廃墟の独特の魅力の一つをなしています。古びた建造物は、かつてそこに人びとが存在したことの名残り。無造作に生い茂った草木は、その人びとがもはや存在しないことの証し。その両者が相…

文学部フォーラムのお知らせ

熊大文学部の公開講演会「文学部フォーラム」(第七回)が下記のとおり行われます。参加無料、申し込み不要ですので、どうぞご参加ください。 日時:12月11日(土)14:00〜17:00 場所:熊本大学文学部・法学部棟A3教室プログラム 開会の言葉 大熊 薫(熊本…

『文化社会学入門 テーマとツール』

井上俊・長谷正人(編)『文化社会学入門 テーマとツール』(ミネルヴァ書房)が発刊されました。この中の「文化と権力」という項目について執筆しました。 文化社会学入門―テーマとツール作者: 井上俊,長谷正人出版社/メーカー: ミネルヴァ書房発売日: 2010…

『世界は踊る −ちいさな経済のものがたり−』

今日は演劇『世界は踊る −ちいさな経済のものがたり−』のお知らせです。 フランスと日本の演出家の共同制作によって創られたこの劇では、物々交換の時代から現在の金融危機まで、人類史的なスパンで人間の経済活動を辿ることが試みられるようです。この劇に…

『社会学ベーシックス10 日本の社会と文化』

『社会学ベーシックス10 日本の社会と文化』(世界思想社)が発刊されました。この中で、第10章「『近代』の知識社会学 柄谷行人『日本近代文学の起源』」を担当執筆しました。この原稿の校正をしていたのが2007年、パリに住んでいた頃だったので、3年越し…

シンポジウムのお知らせ

昨夜パリから熊本に戻ってきました。帰りの機内で東京の気温が29℃と言っていたので、相当覚悟をして空港に降り立ったのですが、思っていたよりかは涼しくなっているように感じました。熊本もそうで、ぎらぎらするような日射しが無くなっていて、助かります…

オランダ紀行(4) : アンネの家のこと

オランダを離れ、パリに来てすでに5日になりますが、書き残したことが一つあるので、ここでそれを。 オランダがナチスに占領されていた頃にアンネ・フランクとその家族が隠れて暮らしていた家は、今ではアムステルダム有数の観光資源となっていて、夜の9時…

オランダ紀行(3) : 自転車を観察する

オランダが自転車大国であるとは聞いていて、実際、人々はよく乗っていますが、しかしこの国の自転車はどうも日本のものと印象が違うようなので、図書館の開館を待つあいだ、少し観察をしてみました。 全体として言えるのは、古びた自転車が多いということ。…

オランダ紀行(2) : 交通空間のゆるさについて

たとえば二本以上の道路が交差するとき、日本では、よほど交通量が少ないところでないかぎり、たいてい信号によって交通が制御されます。もちろんヨーロッパにも信号はあちこちにありますが、交通量の多い交差点であるにもかかわらず、信号がない場合もあり…

オランダ紀行(1) : プロテスタンティズムの名残り

オランダのアムステルダムに来て一週間以上経ちました。今回オランダに来たのは、この国の多文化主義の現状について調べるためです。それについてはまたいずれどこかで書くとして、今回は初めて訪れたこの国についての印象を書き留めておきたいと思います。 …

フランス都市暴動論の公刊

昨年の日仏社会学会シンポジウムでの報告原稿が公刊されました。 「社会運動から暴動へ−フランス郊外における集合行為の変容について」 『日仏社会学会年報』第19号、2009年 http://wwwsoc.nii.ac.jp/sjfs/gakkaishi.htm フランスの都市暴動については、郊外…

オルハン・パムク『雪』を政治的に読む

オルハン・パムクの小説『雪』について書いた原稿が刊行されました。 http://homepage3.nifty.com/BC/C8_1.htm 『雪』は、ドイツに暮らすトルコ人詩人が、トルコのうら寂れた小都市カルスを訪れ、そこでイスラム主義勢力と世俗主義勢力との抗争に巻き込まれ…

田口先生最終講義&退職記念パーティ

先週の土曜日、同僚の田口宏昭先生の最終講義と退職記念パーティが無事に終わりました。田口先生は1973年の着任以来、熊大の社会学研究室で37年にわたって教鞭をとってこられました。ということは、僕の生まれた年からずっと、教えてこられてきたとい…

ピア・レヴューのお知らせ

最近すっかり告知板と化しているこのブログですが、今日もお知らせを一つ。来月、学内ピアレヴューで報告を行います。 「総合人間学科ピア・レビュー」日時:2月10日(水)15:00−17:00 場所:熊本大学 くすのき会館 レセプションルーム 発表者…