オランド大統領の誕生

フランス大統領選挙は、誰もが予想する通りの結果となり、オランド大統領が誕生することになりました。極右政党党首が白票、中道政党および左翼党の党首がオランドへの投票を言明していたなかで、オランド51,63%、サルコジ48,37%という結果なので予想外の僅差と言うべきかもしれません。(ルモンドの記事によれば、極右政党および中道政党の支持層の多くがサルコジに流れたようです。)
http://www.lemonde.fr/election-presidentielle-2012/article/2012/05/07/le-profil-des-electeurs-de-francois-hollande-et-nicolas-sarkozy_1696811_1471069.html

それにしても、第五共和政で二度目の現職大統領の敗北の原因は、サルコジ個人の不人気ぶりのみならず、やはりギリシャ債務危機の余波が大きかったと言えるでしょう。この危機が顕在化して以降、ギリシャをはじめ、アイルランド、スペイン、イタリアなどで相次いだ政権交代ドミノを、ついにフランス大統領も食い止めることはできませんでした。カリスマ性の無さには定評のあるオランド“でも”勝てたのは、現状への倦怠感がそれほど根深かったということでしょう。

以前このブログで、サルコジ大統領が誕生したとき、日本における小泉改革になぞらえました。http://d.hatena.ne.jp/Yumat/20070508 多少強引であるけれどもそのアナロジーを続けるなら、「今こそ変革」をスローガンに掲げたオランド大統領の誕生は、サルコジ改革の軌道修正であり、その意味で日本で民主党への政権交代が起きた経緯と似ている面もあります。そしてこの政権交代を実現するために、国民受けしやすい、大盤振る舞い的な公約を掲げるあたりも似ています。それでいて、5年以内に財政のバランスを回復させるとも言っています。選挙勝利演説の中で、新大統領は「この勝利によって緊縮政策は運命ではなくなった」と言っていましたが、その代わりに経済成長が至上命題になったとも言えます。それが実現できない場合、5年後に彼は再選に失敗する三人目の現職大統領になるかもしれません。

以下、オランド大統領の主な公約を、メモ書き程度に。
http://www.lemonde.fr/politique/article/2012/04/23/comparez-les-programmes-de-nicolas-sarkozy-et-francois-hollande_1689558_823448.html

・銀行の金融活動の規制強化
・ユーロ債の発行
・富裕層への課税強化
・国内産業とりわけ中小企業の支援
・地方に工場移転する企業へのインセンティヴ付与
・教員の増員
・警察の増員
・農業・漁業の競争力強化
・62歳に引き上げられた年金支給年齢を60歳に戻す
・新学期手当の増額
・公立病院の維持
・社会住宅の建設
・減原発(2025年までに原子力依存度を50%に)
・大学間交流の促進
外国人参政権の実現
同性婚の合法化
フランス軍アフガニスタンからの撤退
パレスチナ国家の承認