シンポジウムのお知らせ

2010年1月8日から10日まで、名古屋大学でシンポジウム「反乱する若者たち――1960年代以降の運動・文化」が行われます。初日のシンポジウム「<反抗者>たちとその系譜──Singularité et Universalité」でディスカッサントを務めることになりました。シンポジウムだけでなく、講演会や映画上映、ギャラリートークや写真展などで60年代以降の時代を分厚く捉え直してゆくという、盛りだくさんな内容になっています。

http://www.lit.nagoya-u.ac.jp/~jculture/osirase.htm

去年フランスにいた頃、ちょうど68年の5月革命から40周年ということで、あちこちでシンポジウムが開かれたり、メディアで特集が組まれたりしていました。日本でも、今年になって小熊英二氏『1968』が出版されるなど、この時代への注目が高まっています。

1968〈上〉若者たちの叛乱とその背景

1968〈上〉若者たちの叛乱とその背景

1968〈下〉叛乱の終焉とその遺産

1968〈下〉叛乱の終焉とその遺産

今日、このテーマを取り上げることには、「○○周年」というメモリアルな意味あいを超えた、アクチュアリティがあります。この40年のあいだに若者たちの運動の文化は衰退し、脱政治化・個人化が進行しました。学校や仕事といった日常への回帰が進み、消費への志向がそれを動機づけました。世の中や人生にたいする不満があっても、それは消費でそのつど埋め合わせていけばなんとかなると思われた時代――そのスワンソングは「終わりなき日常を生きろ」でしょう――が過ぎ、90年代後半あたりから徐々に現れてきたのは、豊かで刺激に溢れ、そして無意味で退屈な「終わりなき日常」は、それ自体で成り立っているわけではなく、安定成長に基づく消費社会の存続を前提としないかぎり成り立たないという、身も蓋もない現実でした。そのような社会が自明のものでなくなりだしたとき、すでに起こっていた脱運動・脱政治・脱集団の結果、個人はすでに身動きが取れず、自分が直面する不満やストレス、リスクはすべて自分一人で向き合わなければならなくなっていた、というのが、今日少なからず見られる状況でしょう。

こういった身動きのとりにくい状態を脱するためにも、この40年間を振り返り、<反抗する若者>の問題系を問い直すことは、とても重要な課題だと思われます。



国際シンポジウム「反乱する若者たち――1960年代以降の運動・文化」

1月8日(金)

9:30-11:30  映画上映『圧殺の森』
    (1967年、小川紳介、16ミリフィルム提供:アテネ・フランセ文化センター)
    紹介:畑あゆみ(アルスター大学博士課程)


10:00-12:00  ギャラリー・トーク「特別な他者
                          ──アートという場における『連帯』」
    会場:プロジェクトギャラリー「clas」
    アーティスト:高橋耕平、大粼のぶゆき、田中さつき、澤崎賢一
    企画・司会:茂登山清文(名古屋大学


13:00-16:30  新世代パネル「<反抗者>たちとその系譜
                          ──Singularité et Universalité」

    ディスカッサント:松浦雄介(熊本大学
    司会:杉田智美(名古屋大学博士課程)
    企画:杉淵洋一


17:00-18:30 映画上映『にっぽん零年』
    (1968年、藤田繁矢・河辺和夫他、DVD提供:日活)


19:00- アーティストトークとオープン・レセプション
    会場:プロジェクトギャラリー「clas」


1月9日(土)

10:00-12:15  基調講演「西川長夫が語るパリ五月革命
    講師:西川長夫(立命館大学
    対話者:水嶋一憲(大阪産業大学


14:00-18:00  シンポジウム第1部「東アジアの運動と主体」

    コメント:テッサ・モリス-スズキ(オーストラリア国立大学
    討議
    司会:坪井秀人


1月10日(日)

10:30-15:45  シンポジウム第2部「女性と運動・消費・文化」

    コメント:加納実紀代(敬和学園大学
    討議
    司会:藤木秀朗(名古屋大学


16:15-18:00  ラウンド・テーブル
    全パネリスト+ディスカサント+西川長夫、司会:坪井秀人


18:30-  オープン・レセプション


関連企画
特別展示「写真と資料から見る「パリ五月革命」」
    期間:1月8日(金)〜1月10日(日)
    会場:名古屋大学文系総合館7階会議室
    資料提供:西川長夫
    企画協力:杉淵洋一


展覧会「T と T たち──アーティストと、他者としてのアーティスト」
    アーティスト:高橋耕平、大粼のぶゆき・高橋耕平・田中さつき、
           澤崎賢一+高橋耕平
    期間:1月5日(月)〜1月14日(木) (10〜18時、土日休み)
    会場:名古屋大学教養教育院プロジェクトギャラリー「clas」
    企画:茂登山清文