社会調査実習報告書『三池炭鉱 地域の記憶、世界の遺産2016』

今年度の授業「社会調査実習」の報告書『三池炭鉱 地域の記憶、世界の遺産2016』ができました。


今回は2011・2013年度に引き続いて三度目ということもあり、調査成果の還元という意味を込めて、成果報告会を行います。また、今回は共同授業担当者であり、映像人類学を実践する慶田先生のご指導により、写真にも力を入れたので、写真展覧会も行います。報告書が終わっても、まだまだすることが多くて大変ですが、なんとか有終の美を飾りたいと思います。


成果報告会(無料)
日時:3月20日(月)14:00−16:30 
会場:大牟田市石炭産業科学館1階 円形ホール 



写真展覧会(無料)
日時:3月20日(月)〜4月2日(日)16:00まで
会場:大牟田市石炭産業科学館1階 企画展示室 


大牟田市石炭産業科学館のHP
http://www.sekitan-omuta.jp/topic/index.html


奇しくも今年は三池炭鉱閉山20周年、大牟田市制100周年ということもあり、過去2回以上にメディアでも取り上げていただきました。また、先月は、大牟田市長との懇談会に、本授業の参加者4名が呼ばれて参加しました。

大牟田市役所のHP「市長からのメッセージ」
http://www.city.omuta.lg.jp/hpkiji/pub/detail.aspx?c_id=5&type=top&id=8876


こういった新しい展開があったのも、これまで一つの場所に軸足を置いて、継続して調査を行ってきたことの賜物と思います。調査でお世話になった方々に、あらためて感謝します。

『ノーノー・ボーイ』新訳書ご寄贈いただきました

ジョン・オカダ『ノー・ノー・ボーイ』については、このブログでも以前に取り上げました。

http://d.hatena.ne.jp/Yumat/20130327

昨年末、この作品の新訳(今度のタイトルは『ノーノー・ボーイ』と、中黒が一つ減っている)が出版され、訳者の川井龍介氏よりご寄贈いただきました。川井氏とは面識はないのですが、川井氏か出版社の方がブログを見ていただいたのでしょうか。ありがとうございます。

ジョン・オカダのエッジの利いた文章を読む楽しみが、多くの読者に届いてほしいと思います。

ノーノー・ボーイ

ノーノー・ボーイ

『映画は社会学する』

編者としてかかわった『映画は社会学する』(法律文化社)が、ついに刊行されました。動き始めたのは2年前ぐらいだったでしょうか?長かったようにも思いますが、今から考えれば、けっこう順調なプロセスだったように思います。良い執筆者に恵まれて、良い本になりました。皆さん本当にありがとうございます。

内容は、社会学理論の教科書です。理論というととっつきにくい感じがして敬遠されがちですが、日本映画を素材としつつ社会学の基本的な理論をわかりやすく説明しているので、案外わかりやすく、さまざまな場面で使えるツールであることがわかっていただけるのではないかと思います。映画をすでに観ている人は「ああなるほど、あの場面が社会学理論を使えればこんな風に解釈できるんだ」と思い、観ていない人は映画を観たくなるような箇所がたくさんあり、そうこうしながら社会学の理論を学べるというつくりになっています。

大学ではじめて社会学を学ぶ人、大学院の院試のために社会学理論を学びなおしたい人、教養として社会学について知りたい人、映画がどのように社会学的に解釈できるのか知りたい映画好き、日本映画をつうじて日本の社会や文化を理解したい人などにお勧めです。



映画は社会学する

映画は社会学する

作田先生のこと

作田啓一先生が15日に亡くなられた。


先生が主催する研究会に参加するようになったのは2001年か2002年、ポスドクをやっていた頃だったと思う。先生はすでに京大はもちろん、定年後に着任された甲南女子大も退職されていた。しかし80歳になってなお、頭脳は明晰で、最新の思想を摂取して思考を刷新・深化し続ける姿に、ほとんど人間観が変わる思いがした。人間の身体にとって老化は自然なプロセスの一環だけれども、脳だけはそのプロセスからいささか外れていて、身体の加齢が進行しても高度な機能を保つことができるということを、知識としては多少知っていたけれども、先生との出会いはそれを眼前に示されたようで、衝撃だった。先生は生成する知性そのものだった。


研究会の後の飲み会でご一緒するとき、いつも先生の生活史を、もっとお聞きしたいと思っていた。それは先生が戦争や学生運動など、20世紀の激動の時期を当事者として体験されてきたからでもあるし、先生の思想がどのような過去の体験とどのように関係しているのかを知りたかったからでもあった。


けれども、先生はプライベートなことをほとんど語らなかった。そして先生からは、何となくプライベートなことを伺うのがためらわれる感じがした。


だから先生のブログや、先生ともっと付き合いが長く密な他の人から時々聞くくらいのことしかわからなかった。それでも、断片的なエピソードから、先生のしなやかな知性の裏側にある過去が垣間見えることがあり、いっそう先生の奥深さに魅せられていった。それは少し、漱石『こころ』の「先生」にたいする「私」の感情に近いものがあったのかもしれない。


先生は社会学を標準的な学説研究と実証研究の枠に閉じ込めず、文学や哲学など他分野に開き、社会学のフロンティアを押し拡げてこられた。私が博士論文で文学の社会学という、まったく非主流的なスタイルの研究をすることができたのも、先生や、先生の薫陶を受けた他の先生方が道を切り開いてくださったからだった。制度から横溢し、制度を越えていくところにおいて人間を探求する先生にとって、社会学や哲学といった区別は、思考を制度化するものでしかなかった。先生は、思考することの自由を、学問することの純粋な楽しみを感じさせてくれる人だった。


先生のご冥福を心からお祈りします。

全国石炭産業関連博物館等研修交流会@三池

Yumat2015-10-22

先週末、全国石炭産業関連博物館等研修交流会(それにしても長い名前…)が福岡県大牟田市熊本県荒尾市でありました。これは、毎年秋に、全国の旧産炭地から一つ場所を選び、石炭または炭鉱に関わりのある人が集まって交流するイベントで、釧路・長崎(端島・高島・池島)・筑豊常磐に続き、今年は三池で行われました。


ここ数年調査研究してきた三池炭鉱のことと、この夏に調査をしたフランスのノール=パ・ド・カレー炭鉱について報告しました。ユニークな会場とユニークな雰囲気のなかでの報告となり、とても面白い体験となりました。


この交流会の名物・巡検にも参加しました。今まで何度となく三池炭鉱関連の場所を訪れましたが、それでも訪れたことのない場所や、特別な許可なくしては入れない場所などをたくさん訪れ、また新しい大牟田・荒尾の風景を知ることができました。朝から精力的に動きまわり、ときには藪をかき分けて道なき道を行くなど、けっこうな強行軍でしたが、それに見合う発見や出会いもいろいろとありました。


毎年この会を企画してくださる釧路市博物館の石川孝織さん、そして現地ガイドとして全行程にわたっていろんなお話を聞かせてくださった「NPO大牟田・荒尾 炭鉱のまちファンクラブ」の中野浩二さんならびに藤木雄二さんに、心から感謝です。


海上から眺めた三池港内と三池港閘門